bitProject(ビットプロジェクト)

bitProjectは、砂防事業に関わる土砂動態解析技術をはじめ、調査、解析、計画、設計の検討、作業手法にコンピュータプログラミングの技術を取り入れて、技術の高度化を図ることを目的としたオープンソースプロジェクトです。

土砂移動シミュレーションシステム

1次元、2次元シミュレーションの検討作業について、作業別に8つのアプリに機能を分散させたシステムです。機能を分散させた理由は、技術者の判断を優先するため作業の単純化ではなく技術検討の余地を残すこと、入力データの多様性や計算機能の追加、変更などカスタマイズを柔軟に行うことあるいは他の目的の利用を容易にするためです。8つのアプリの概要は以下の通りです。

1. Rational

合成合理式法による流量の計算を行います。流入ハイドログラフの検討の基礎データとなります。

2. StoredFunc

貯留関数法による流量の計算を行います。流入ハイドログラフの検討の基礎データとなります。

3. DEM_FileCreater

国土地理院の5~10mメッシュデータを変換して、平面直角座標系のYXZデータをテキスト形式で出力します。

4. CrossSection

レーザープロファイラーのデータ(LPデータ)など平面直角座標のDEMから中心線に沿った測点別及び任意測点の横断図データを出力します。

5. BaseGeoData_1D

横断図データを用いて平均河床高の設定や岩盤高の設定を行い、1次元シミュレーションに用いる地形データを出力します。

6. Simulation_1D

土砂洪水氾濫対策の検討に対応した1次元土砂移動シミュレーション計算を行います。

7. BaseGeoData_2D

平面直角座標のDEMから計算メッシュの地盤高や岩盤高の設定を行います。

8. Simulation_2D

土砂洪水氾濫対策の検討に対応した2次元土砂移動シミュレーション計算を行います。

作業環境及び使用例

データ入力作業、グラフ表示
Simulation_2Dの入力データEXCEL
Simulation_2Dの計算ハイドログラフ

テキストファイルへのデータ入力は慣れないとやりずらいものなので、データ入力の補助ツールとしてEXCELを用いています。また、出力データのグラフ描画においても利用しています。

中心線の検討、DEM編集、2次元シミュレーション結果表示
QGISを活用した中心線の設定
QGISによるSimulation_2Dの結果表示

中心線の検討やDEM編集などを行うGISソフトとしてQGISを活用しています。2次元シミュレーションのデータ作成や結果表示では、作業省力化のためQGISのプラグインを作成しました。

グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)の活用
DEM_FileCreaterの入力フォーム
DEM_FileCreaterの計算実行フォーム

各アプリの実行は、Windowsのフォームアプリケーションを利用しています。フォームアプリケーションを利用することで、データ入力や作業手順に間違いが少なくなり、作業者の負担が軽くなります。また、必要であればデータのチェックも行うことができます。

Simulation_1Dの計算例
Simulation_1DのGifアニメ
Simulation_1Dの粒径別の堆積深図

1次元シミュレーションでは、縦断方向のデータとなるので、Gifアニメによる土砂移動計算結果や粒径別の土砂堆積状況などが確認できます。このほか、各横断位置での水深や河床変動高の変化図や土砂収支計算結果などが出力されます。

Simulation_2Dの計算例
Simulation_2Dの結果の3D表現例
Simulation_2Dの流動深及び流速ベクトル

2次元シミュレーションでは、QGISとの連携により結果を3D図(鳥観図)として出力することや面的な土砂洪水氾濫流の方向などを表現することができます。このほかに出力できるデータとして、侵食堆積深図、土砂濃度分布図、流体力分布図、計算ハイドログラフや土砂収支計算結果などが出力できます。

砂防施設配置計画検討システム

LPデータを活用した土砂洪水氾濫対策の施設配置計画や砂防堰堤予備設計の検討作業について作業別に9つのアプリに機能を分散させたシステムです。9つのアプリの内、DEM_FileCreaterとCrossSectionは、土砂移動シミュレーションシステムと共通です。また、作業環境も土砂移動シミュレーションシステムと同様です。

1. Rational2 (R6年度計画)

合理式法による合流点及び砂防堰堤計画位置における計画対象流量を算出します。

2. BasicStructure

掃流の砂防堰堤、掃流の流木捕捉工、土石流の不透過型砂防堰堤、透過型砂防堰堤の4つの形式の構造物諸元を検討するツールです。

3. StructuralDrawing++ (R5年度計画)

BasicStructureで出力された構造物諸元データをもとに構造一般図のDXFデータを出力します。また、構造一般図データを用いて、ワイヤーフレームとしての3Dデータの出力を行います。さらに、一般図に対応するコンクリートボリューム、型枠面積等を算出し、単価を乗じて概算工事費を算出します。

4. DEM_FileCreater, 5.CrossSection

土砂移動シミュレーションシステムと共通のアプリです。

6. SedimentStorage

CrossSectionで作成された縦横断図データをもとに、砂防堰堤計画位置における高さ別の堆砂量を計算します。

7. Deposit_Erosion (R7年度計画)

2時期のLPデータの差分図を作成し、変動量を算出します。

8. SedimentBudget (R7年度計画)

Deposit_Erosionの変動量とSedimentStorageの堆砂量を考慮して土砂収支計算を行います。

使用例

SedimentStorageの出力
高さ別の堆砂量図(EXCEL)
堆砂縦断図のDXF出力

砂防堰堤計画位置の堆砂量(計画堆砂勾配、平常時堆砂勾配別に)を計算し、グラフ表示します。また、出力図として、DXF形式の堆砂縦横断図データや横断測点位置での堆砂面データなどを出力します。堆砂面データは、QGISを活用して堆砂面の3D図として表現可能です。

BasicStructureのGUIによる作業例
GUIフォーム1と2
GUIフォーム3とEXCEL計算書

4つの形式の砂防施設の基本構造が設計の流れに沿って技術基準の内容や運用について意識しながら検討できます。構造形式選択画面(フォーム1)で対象となる形式を選択した後、検討フロー画面(フォーム2)において流れに沿って検討を進めていきます。各種検討画面では、検討結果としての計算書(EXCEL)が出力できます。一連の検討を終えた後、記録した構造物諸元を保存することができます。保存したデータは、構造物一般図作成アプリ(StracturalDrawing)の入力データとして使用されます。

StructuralDrawing++の作業例
根入れや垂直壁の天端高の確認
段切り形状や袖嵌入の確認

BasicStructureで検討された構造物データを活用して、作図条件を設定し一般図を作成することができます。作業は、入力データに対応してグラフィックにより形状を確認できますので、視覚的にスムーズに条件を判断することができます。

作成できる一般図は、DXF形式のデータとして出力されます。また、一般図のデータを活用して、ワイヤーフレームモデルの3Dデータ(DXF形式)や概算工事費を算出し、エクセルの計算書に出力します。

StructuralDrawing++の出力例
一般図(本堤正面図と平面図)
一般図(側面図と垂直壁(副堰堤)正面図)
ワイヤーフレームモデルの3Dデータ

サポート

ご存じですか?中国の格言「魚を与え
るのではなく釣り方を教えよ」・・・・・これを心構えとしてサポートに取り組んでいます

bitProject の参加者は、Office.bit に土砂動態調査・解析、土砂移動シミュレーションや砂防調査・計画・設計などに関する技術相談ができます。また、上記のアプリの最新版がいつでもダウンロードでき、使用方法の説明を受けたりアップデートの要望ができます。

このほか、アプリの活用、プログラミングの習得や基礎知識の理解を目的とした作業実習や講習会の開催を承っています。

なお、サポートを充実するため、定期訪問やメール・オンライン・電話連絡などによる質問や説明を適宜行っています。

定期訪問

参加1~2年目は月に1回程度、3年目以降は不定期に参加者のオフィスに訪問します。定期訪問の時には、bitProjectの規約の説明、アプリの使用方法、bitProjectの運営状況の説明や新しいアプリの紹介などを行います。また、参加者からの質問や技術相談なども行っています。

定期訪問の時の様子
各自PCで作業していただきながら説明

左の写真は、新しいアプリのリリースに際して、使用方法や出力結果などについて紹介しているところです。

作業実習、講習会の開催(オプション)

サポートのオプションとして、①QGISを活用した2次元シミュレーションの作業方法の実習、②プログラミング技術をスムーズに導入するためや③土砂移動解析の基礎理論と実務での運用の知識を習得するための講習会の開催を承ります。すぐに、実施可能な講習会メニューは次の通りです。

1. QGISを活用した2次元シミュレーションの作業手順 (全3日間)

①計算範囲の検討及びDEMの編集処理作業:DEMデータのインポート、編集、エクスポート、計算範囲の設定と計算メッシュの作成

②地形データの編集及び境界条件の設定:地形データの編集、境界条件の設定、計算条件データのエクスポート

③計算結果データの表示 :計算結果の表示、3Dビューの作成、印刷レイアウトの作成

2. C言語プログラミングの基礎 (全10日間)

プログラミング技術をスムーズに導入するため、C言語のプログラミングの基礎を実習形式で学ぶ内容です。前半(7日間)はC言語の文法規則の習得やポインタの理解に重点を置いた内容としました。後半(3日間)は、構造体、ファイル操作などアプリの開発に関する実践的な内容としました。

3. 砂防施設配置計画の実務における土砂移動解析の基礎知識 (全7日間)

砂防の土砂動態解析に関する近年の進歩は目覚ましく、年々、解析技術の高度化が進んでいます。大学等で土砂水理解析について履修しておおらず、一度、正しい基礎知識を身に着けたいと考えている人、現在の技術動向にアップデートしたいと考えている人に向けた内容となっています。

その他の業務

砂防調査、解析、計画、設計に関わる技術検討、作業依頼

土砂移動シミュレーションをはじめとした技 術検討、bitProjectのサポートにおける技術相談の範囲を超える作業については、個別業務としての対応を致します。また、技術検討だけでなく現場作業や技術検討結果の評価や照査などを含めて柔軟に対応します。

R4年度に対応した業務内容の実績
  1. 土砂移動シミュレーション 1件
  2. 砂防調査・計画・設計の技術評価または照査 3件
  3. 土砂動態調査・解析 1件
  4. 砂防施設予備設計に関わる技術検討 2件
R5年度に対応した業務内容の実績
  1. 土砂移動シミュレーション 3件
  2. 砂防調査・計画・設計の技術評価または照査 1件
  3. 砂防調査・計画にかかわる技術検討 3件
  4. 砂防施設設計に関わる技術検討 3件

社内研修会の講師

土石流区間の状況(清流橋)
砂防計画基準点

土砂動態調査・解析や土砂移動シミュレーションに関する講習会、勉強会など社内で行う研修会の臨時講師を承ります。

2号砂防堰堤の堆砂状況
A社の設計現場にて記念撮影

左の写真は、令和5年5月に開催されたA社の清水町ペケレベツ川の現場見学会に臨時講師として招かれたときの写真です。ペケレベツ川は平成28年災害後に調査、計画を携わった経験があったので、その経験をもとに説明させていただきました。また、A社が担当された砂防施設の現場を視察でき、有意義な見学会であったと思います(^^♪

以上に関わらず、可能な限り御社のご要望にお応えしたいと考えております。遠慮なく、ご相談ください(^^♪